現在、世界では8億2,800万人の人びとが飢餓に苦しんでおり、2022年は過去最高となる3億4,900万人が急性の食料不安に直面しました。この数は2019年の1億3,500万人から拡大しており、3年で2億人増加しています。さらに90万人以上が飢餓の中でも最も深刻な飢きんに近い状態にあり、5年前と比較して10倍と憂慮すべき割合で急増しています。国際社会はSDGsで掲げた「2030年までに飢餓と栄養不良をなくす」という約束を反故にしてはならないのです。
飢餓は、気候危機や紛争、物価の高騰など、複数の要因が重なって起きています。とりわけ近年は新型コロナウイルス感染症が、状況を急速に悪化させました。さらに世界有数の農産物輸出国であるウクライナでの戦争が、食料危機に拍車をかける形になりました。その結果、南スーダンやイエメンをはじめ、各地に“飢餓のホットスポット”が生じています。
2022年2月、ウクライナでの戦争が開始された直後から国連WFPは迅速に支援を開始し、これまで1,000万人以上に食料と現金による支援をしてきました。また、封鎖された黒海の港の開放を要請し、同年8月から穀物輸送が再開。これによってウクライナ経済と世界の食料危機の緩和に貢献しました。
2022年2月24日、ウクライナ戦争が勃発。国連WFPは、ウクライナ国内と近隣諸国に避難する人びとへ食料支援を開始し、最初の支援物資400トンが3月3日、ルーマニア・ポーランド・ウクライナの国境に向かいました。
国連WFPは、包囲された地域に物資を届ける輸送隊を主導するなど、戦争の影響を受けるもっとも脆弱な人びとの支援を担ってきました。また、物流や情報通信など、人道支援機関が共同使用できる資源などを提供しています。
2022年は多くの寄付をいただき、
過去最高額を届けました。
2022年度、国連WFP協会に寄せられた企業・団体、個人の皆様からのご寄付は過去最高の約43.7億円となりました。そのうち19.4億円がウクライナ緊急支援へのご寄付で、企業・団体からは食品業界のみならず、IT、自動車、運輸業など幅広い業種の企業200社以上から16.1億円の寄付が寄せられました。
国連WFP協会が日本の皆様からお預かりし、WFP国連世界食糧計画に送金した寄付額は約35.8億円となりました。そのうちの約7.7億円は、“誰も取り残さない”という方針のもと「使途指定なし」として送金し、国連WFPが最も資金を必要とする支援活動に活用させていただきました。
不安定化する世界、急がれる食料支援
2月、マダガスカル中東部沿岸にサイクロン「バチライ」が上陸。強風と豪雨、洪水により緊急に支援を必要とする人は2月末時点で27万人を超えました。国連WFPは有事の際に迅速に対応できるよう、事前に50トンの食料を当地へ配置しており、それを政府と連携して主要都市に配備することで、10日間で約1万人(2,000世帯)の支援を実行しました。あわせて、被害を受けた人びとに食料と現金の援助を届けるために急行し、緊急対応への後方支援も実施しました。
続きを読む1948年の独立以来最悪の経済危機に見舞われているスリランカでは、インフレや穀物生産の減少、異常気象、ウクライナ戦争の余波などから、人口の約30%にあたる600万人以上が食料不足に陥っています。国連WFPは340万人に食料支援をすることを目標に、食料・現金・食料引換券の提供を開始。また、学校給食支援を通じて100万人の子どもに、そして栄養強化食品を提供する政府プログラムを通じて100万人の妊娠・授乳中の母親と幼児に手を差し伸べています。
続きを読む2011年から紛争が続くシリアでは、過去11年間(2022年時点)で国内外に避難した人が1,300万人を超え、多くが今なお帰郷できていません。そしてウクライナ戦争が、食料価格の高騰に苦しんでいた人びとに新たな打撃を与えました。国連WFPはシリア危機を最大の重要事案の一つととらえ、国内外の難民に食料、現金、それらに引き換えられる電子カードの提供、生活向上支援などを行いました。ただ、2023年2月にトルコ・シリア地震が起こり、支援の必要性は一層高まっています。
続きを読む2022年国連WFPは141億米ドルの資金を調達することができました。しかし、これは必要とされた額214億米ドルに対し、73億米ドル不足しています。この資金不足により、国連WFPの現地職員は支援対象者の選択や支援量の削減など、苦渋の決断を迫られています。